BYREDOのELEVENTH HOURは澄んだ大気を深呼吸した時の香りだ。
メントールとニッキを混ぜ合わせたような香りがすっと鼻腔を抜け、寒冷な空気が脳にキンと響き渡る。
そして、標高8848mのヒマラヤ山脈の景色が脳裏に広がる。これがトップノートのネパールペッパーの導入部。
その後、キャラメルを焦がしたような香ばしく遊興的なラム酒やフィグの官能的な香りが交錯し、砂糖菓子の甘い香りから、幼き頃の回想へいざなわれる。
香りの強さや持続性はBYREDOの中では控え目で、アロマキャンドルを灯した時のような、ほのかな微香がゆらゆらと3時間程続き、やがて大気の中の素粒子となり消えてゆく。
ELEVENTH HOURは英語で「最後の瞬間」を意味するそうで、ちょうど仏陀が沙羅双樹の下でご入滅された光景を想起させ、人生の儚さや人間の脆弱性とも重なりあう。儚き現世は甘美な明晰夢であるぞとトンカビーンの甘い香りが纏う者の生を祝福する。
ELEVENTH HOURの香りは、基本的にはユニセックスに使用出来るハッカのような寒冷感ある香りが特徴。
今や嗅覚情報も氾濫する日常だが過剰な香りはそぎ落とし、神聖で清浄な高山世界へのイマジネーションが広がる香りだ。
香りの構成
トップノート: ネパールペッパー(コショウ、ベルガモット)
ミドルノート: キャロットシード、ラム、ワイルドフィグ(野生のイチジク)
ベースノート: トンカビーンズ、カシミアウッド
◇ネパールペッパー
ティムットペッパーとも呼ばれ、フルーティーでグレープフルーツやパッションフルーツなどの柑橘系の香り。
※コショウ、ベルガモット(アールグレイティーに使用される柑橘系の香り)の表記もあり。
◇キャロットシード
すっきりとしたドライでハーバルな香り。種子から採取されるキャロットシードの精油は普段食べるニンジンの根とは違い、ハーバルな中にほんのりスパイシーな香り。
◇ラム
ラム酒の香り。
◇ワイルドフィグ
野生のイチジクの香り。
◇トンカビーンズ
トンカビーンズは「トンカ」という樹木の種子を乾燥させたものから抽出される精油。桜餅の香りがする精油で「クマリン」という香りの成分で独特の香りが生まれる。お菓子の香料としても使われる甘い香りで、トンカビーンズの香りは、桜餅の他にバニラビーンズやカラメルの香りを連想させる。
◇カシミアウッド
ムスク系とグリーン系の香りをブレンドした木の香り。