お盆休みも終わりを迎えた昨年8月、江の島へウォーキングへ行った時の事だ。
島内の石畳の小道をすれ違った若いカップルのお嬢さんから良い香りがした。
「あ、これBYREDOのBLANCHE...。」と嗅覚が反応した。
街の中でふと記憶にあるフレグランスが鼻腔にふんわり漂ってきた時、自分自身が纏った時より、その香りの良さや魅力にあらためて気づく事がある。
ちなみにBLANCHE(ブランシュ)はフランス語で「白」の意味。
BYREDOと言えばBLANCHE(ブランシュ)と即座に連想する程、ブランドのイメージを代表する香りであろう。
香りの構成
トップノート:ホワイトローズ、ピンクペッパー、アルデヒド
ミドルノート:バイオレット、ネロリ、ピオニー(牡丹)
ベースノート:ブロンドウッド、サンダルウッド、ムスク
そのすれ違った若いお嬢さんは、ちょうどオーガニックな植物柄の白いワンピース姿でその容姿と相まって、何とも可憐でエレガントな雰囲気を醸し出していた。
夏の強い日差しの陰影と、海から吹く熱い潮風に運ばれてきたBLANCHEの香り。
そんな残暑のコントラストにBLANCHEのかぐわしさが際立っていた。
BLANCHEの香りをホワイトローズから連想する清楚でエレガント、石鹸の香り等に例えられている事がよくあるが、個人的にはもっとトリッキーな要素を含んでいると感じる。それこそがアルデヒド効果か。
総じてラグジュアリーな香りではあるが、チェルシーのバタースカッチやオリーブオイルを連想させるような世俗的な香りが隠喩的に織り込まれている事で、一度嗅ぐと再び嗅ぎたくなる媚薬的な効果になっている。
ただ清楚で美しいだけの香りでは、BLANCHEはBYREDOの代名詞となるような香りには成り得なかったのかも知れない。
自然のうつろいや現象、即座に脳内で言語化し難きものの魅力を香りに付加しているのが、アルデヒドではないだろうか。
BLANCHEは女性が纏うに相応しい香りだと思っていたのだが、ユニセックスにカテゴライズされている事も多く、男性人気も高いようだ。
確かに中性的な男性から香るイメージも悪く無い。より多くの思索が費やされたポリフォニックな香りは、もはや年齢や性別、国籍を問わぬ自由度と奥深さを持つと言う事であろう。