「とても良い香りしますけれど、何の香りですか?」とACCORD OUD(アコード ウード)に続き、またも反応してくれたのが職場のNさん。
以前と同じBYREDOの香水なのよと話しをし、彼女もBYREDOにはまる素養は十分と感じた。
しかし、初めてMOJAVE GHOST(モハーヴェ ゴースト)をワンプッシュし身に纏った瞬間の私の感想は「何てサブカルな香り!」言わば、下北沢の雑貨屋に入ると鼻腔に流れてくる、お香混じりの少し怪しさを伴うサブカル臭を感じた。
柑橘系の甘酸っぱさ、人フェロモン、それからチューインガム(=サブカル臭はサポジラの香りの仕業かしら。)を混ぜ合わせた不思議な香り。
何の香りか分からないけれど、他では嗅いだ事の無い面白い香りの構成。予想の斜め上を行く個性が異彩を放つBYREDOの香水の数々。
人は本来存在しない香りや、抽象性を具現化した香りには特にそう感じるのかも知れない。
そもそも実在する花であっても、殆どの人はゴーストフラワーなる物の香りを嗅いだ事は無いだろう。
初めて嗅ぐ不思議な香りの魅力。新たな嗅覚刺激を求めて飽くことが無い理由は、とんでもなく脳内歓喜神経回路(=何それ?)を直撃するからではと思う。
香りのレシピを見ながら香りを想起して辿ると、確かに甘さの中にバイオレットを感じるし、マグノリアの柑橘ぽさ、シダーウッドのスモーキー効果で香りに奥行きが増し、更に媚薬としてのアンブレット、サンダルウッド、ムスク、アンバーが隠喩的にエロティシズムの深度を付加する。しかし、決してそれぞれが個別に香りを主張する訳では無いのだけれど絶妙に個性的なコントラストを成している。
そんな、脳内歓喜物質を引き出す魔法のお化け香水がBYREDOのMOJAVE GHOST(バイレード モハーヴェ ゴースト)。
ちなみに、MOJAVE(モハーヴェ)砂漠はアメリカ南西部のカリフォルニア州、ユタ州、ネバタ州、アリゾナ州の4州にまたがる広大な砂漠の乾燥地帯。
多くのゴーストタウンがあり、また航空会社が使い古した旅客機が整備保存される仮置き場として使用されており、引き取り手のない飛行機はそこで解体され飛行機の墓場とも呼ばれている。
MOJAVE GHOST(モハーヴェ ゴースト)はそんな砂漠に咲く野生のゴーストフラワーからインスピレーションを得た香水だ。
香りの構成
トップノート:アンブレット、ジャマイカンネスベリー(サポジラ)
ミドルノート:バイオレット、サンダルウッド(白檀)、マグノリア(木蓮)
ベースノート:シダーウッド、シャンティリームスク、クリスプアンバー
◇アンブレット
アンブレットはムスクの香りがする植物。ハイビスカスの仲間で黄色い花が咲く。植物由来のムスクの代用品として使用される。女性ホルモンの分泌を促進し、官能的な香りで鎮静効果がある。
◇サポジラ(ジャマイカンネスベリー)
サポジラは樹木から採れる樹液にチューインガムの原料のラテックスが含まれており、チューインガムの木とも呼ばれる。果肉は干し柿や黒砂糖のような甘い香りがする。
◇バイオレット
すみれの花を原料とした爽やかな甘さの香り。
◇サンダルウッド(白檀)
サンダルウッドはお香の原料や扇子などにも使用される甘くオリエンタルな香りがする高級な香木。性的な催淫作用や鎮静効果がある。
◇マグノリア(木連)
柑橘系のフルーティーで爽やかな香り。ジャスミン、ネロリ(オレンジフラワー)、レモンの香りを伴う香り。
◇シダーウッド
シダーウッドは針葉樹を意味する。杉や檜をベースにした香り。控えめな甘さとスパイシーな香りが特徴で鎮静作用がある。オリエンタル系の香りに用いられる事が多い。
◇シャンティリームスク
シャンティリーはフランス語で砂糖を加えた甘いホイップクリームの意味。ムスクはジャコウジカの腹部にある香嚢(こうのう)から得られた分泌液を乾燥したもの。現在のほとんどは合成ムスクが使用されている。
◇クリスプアンバー
クリスプはパリパリとした食感。アンバーはマッコウクジラの結石でムスクと並ぶ動物が原料のセクシャルな媚薬。嗅ぐ人を官能的な気分にさせる効果がある。現在、捕鯨は禁止されている為、天然の物では無く合成された香料で代用されている。